~明治時代の製粉小屋を全面解体・再生したカフェ&ギャラリー空間~
この建物は、その昔製粉小屋として使われていた古い小屋を改装したものである。都会で暮らしていたクライアントが、会社の退職を期に生まれ育った家に居を移され、この地で友人たちが集えるギャラリーとカフェ、それと趣味である山野草を販売する場にと計画された。「スローライフ」をキーワードに、既存の材はなるべく残す、自然系の素材を使う、過去の記憶を継承する、という方針のもと改修工事を進めた。
内部空間は、既存の空間の良さが生きるよう至ってシンプルな構成とした。あるのは、長年の年月を耐えた柱と梁。 壁の黒い焼杉板と白い漆喰壁。 床の三和土だけである。新しく交換した部材も柿渋を塗布した。 そして、幾つかの遺物。 製粉所の時代から流れる水路、水車の一部は修復や清掃を行い クライアント所有の古建具、枕木を再利用し、電気配線には碍子を用いた。
決して派手さは無いが、自然な物だけが作り出す 穏やかな雰囲気に包まれる空間作りを目指した。
建物の工事は完了したが、建物はまだ完成していない。柿渋を塗布した木材は色が濃くなっていくであろうし、 三和土の床もひび割れ磨り減り続けてゆく事であろう。この建物がクライアントと共にどのように年月を重ねて、 完成してゆくのか楽しみである。
建築場所 | 福岡県那珂川町 |
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施工面積 | 118.66㎡(35.89坪) |
竣工年 | 平成17年(2005年) |