ローバー都市建築事務所の設計物件や、弊社代表の野村正樹が執筆するコラムなど、
雑誌や新聞に掲載されている情報のご紹介をいたします。
きょうと空間創生術 [273]
先日、京都市の東山・清水五条にある、一軒の京町家を再生する機会に恵まれた。五条通に面した長屋建ての京町家複合施設「HINAYA KYOTO STYLE+STAY」。以前は、清水焼の小売店として使用されていた京町家に耐震補強を丁寧に施しながら、リニューアルを行った改修事例となる。
五条通に面した1階部分には京都西陣の帯地メーカー「ひなや」の総合直営店があり、他の部分には中庭を取り囲むように2軒の京町家宿泊空間が併設されている。
写真は、2階部分に計画された宿泊スペースのリビング部分。小上がり間の琉球畳スペースに吹き抜けを設け、小屋裏にあった丸太はりを大胆にみせるデザインで開放的な居住空間を実現。
五右衛門風呂をイメージした鋳物浴槽や、路地風の玄関アプローチ、和紙を使った温もりのある照明など、随所に和の風情を感じてもらえる工夫を行い、京都ステイの楽しみに彩りを添えるしつらえがなされている。
近年、観光客の増加に伴い、さまざまなタイプの京町家宿泊施設が増えてきている。ゲストハウスや民泊といった話題を耳にする機会も多くなり、その多様化も進んでいる。
今回のように、店舗と2軒の宿泊施設の複合や路地と中庭の混在といった、単一施設ではない京町家の再生事例においては、建築基準法をはじめとして、消防法・旅館業法といった、現行法令との適合も複雑な課題となる。
今回の大規模改修により、次の世代へと受け継ぐことが可能となった、清水にある京町家。現代の殻に合わせながら、最適解を実現することのできた、印象的なプロジェクトであった。