ローバー都市建築事務所の設計物件や、弊社代表の野村正樹が執筆するコラムなど、
雑誌や新聞に掲載されている情報のご紹介をいたします。
きょうと空間創生術 [269]
京都市左京区にある「京都コンサートホール」=写真。平安京建都1200年記念事業の一環として、1995(平成7)年に完成した。鈍く光るいぶし銀のイメージで装飾されたホールの外観が印象的なこの建物の設計は、日本を代表する建築家・磯崎新(いそざきあらた)氏による設計である。
建物を構成する主要な三つのボリューム(大ホール・小ホール・ホワイエ)はそれぞれ、京都固有の三つの軸線(平安京・北山通・賀茂川)に沿って配列されている。表通りからエントランスに至る池沿いの導入路や大小ホールのそれぞれへと至る、らせん状のスロープによるアプローチなどは、京都の社寺空間に学んだ、目的地への期待を高める空間演出である。
93(平成5)年の秋、京都工芸繊維大学で建築を学ぶ学生であった私は当時、建設工事が進められていた、この「京都コンサートホール」磯崎新アトリエ現場事務所で、日夜、模型造りのアルバイトに明け暮れていた。国際的建築家・磯崎新氏の設計を少しでも学ぼうと、学生なりに図面を研究しながら、いろいろと勉強させていただいていた。
当時の私の担当作成部分は、大ホールの天井と、下鴨中通りからメインエントランスに至るアプローチ部分。特に天井部分は、複雑に入り組んだ幾何学形態が組み合わされたデザインであり、夜を徹しての作業であった。
先日、そんな「京都コンサートホール」へ、クラッシック音楽を聴きにいく機会に恵まれた。あれから、もう24年。「京都コンサートホール」を訪れる度に思い出す、私の設計活動の原点ともいうべき、今となってはいい思い出である。