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ローバー都市建築事務所の設計物件や、弊社代表の野村正樹が執筆するコラムなど、
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毎日新聞 2017年08月04日号

毎日新聞 2017年08月04日号
 

きょうと空間創生術 [259]

「平安貴族が夢見た浄土」

毎日新聞 2017年08月04日号 先日、宇治市にある藤原氏ゆかりの寺院、世界遺産「平等院」を訪れる機会に恵まれた。

 10円玉にも描かれている「平等院鳳凰(ほうおう)堂」=写真=は、まさに鳳凰が羽を広げたようなスタイルで、平安貴族の栄華を現代になお伝えている。2014(平成26)年秋、2年あまりの歳月をかけた「平成の大修理」が完了。柱や扉は赤茶色の顔料「丹土(につち)」で再塗装され、屋根の鳳凰1対には金箔(きんぱく)が新しく施されるなど、創建当初の平安時代の華やかさが忠実に復元されている。

 平等院鳳凰堂(当時は阿弥陀堂)の建立は、平安時代後期・天喜元(1053)年のことである。京都南郊の宇治の地は、『源氏物語』の「宇治十帖」の舞台であり、平安時代初期から貴族の別荘が営まれていた。父・藤原道長の別荘「宇治殿」を、その子の関白・藤原頼通が寺院に改め、西方極楽浄土をこの世に出現させたような浄土式庭園と阿弥陀堂を造営したのである。

 経典に描かれている、浄土の宮殿をイメージした優美で軽快なそのフォルムは、中堂、北翼廊、南翼廊、尾廊の4棟で構成され、阿字池の中島に東を正面として浮かぶように石積みの基壇上に建造されている。

 「この世をば 我が世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも 無しと思へば」。権勢の絶頂をうたった、父・藤原道長と、関白・藤原頼通。当時、広く信じられていた「末法思想」を背景に、極楽往生を願い、西方極楽浄土の教主とされる阿弥陀如来を本尊とする仏堂を建立することにより、現世での救済から来世での救済を願ったのである。

 新しくなった、「平等院鳳凰堂」。その華麗な姿に触れながら、往時の歴史ロマンを感じることのできたひとときであった。

 
(株)ローバー都市建築事務所


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