Published 〜メディア掲載情報〜

ローバー都市建築事務所の設計物件や、弊社代表の野村正樹が執筆するコラムなど、
雑誌や新聞に掲載されている情報のご紹介をいたします。

毎日新聞 2017年07月21日号

毎日新聞 2017年07月21日号
 

きょうと空間創生術 [258]

「上賀茂にある名勝・西村家庭園」

毎日新聞 2017年07月21日号 1975(昭和50)年の文化財保護法改正により、新しく創設されることとなった「伝統的建造物群保存地区」。現在、京都市においては、産寧坂石塀小路・祇園新橋・嵯峨鳥居本・上賀茂地区の計4カ所が指定されている。

 これらの地区は通称・伝建(でんけん)地区とよばれ、伝統的な様式をもつ建造物(伝統的建造物)については、その様式に従って保存が図られ、モルタル塗りやアルミサッシなどの現代化によって、伝統的な様式を失った建造物(伝統的建造物以外)については、伝統的な様式に準じて順次、修景を図ることにより、地域の特色を大切に守り育てていく地域となっている。

 先日、そんな伝建地区のうちのひとつ、北区の上賀茂伝統的建造物群保存地区内にある「京都市指定名勝・西村家庭園」=写真=を訪れる機会に恵まれた。西村家庭園は、上賀茂神社の社家であった錦部(にしごり)家の旧宅の庭園であり、明神川から庭園内に水を導入し再び川に戻すというこの地域の社家庭園特有の水利用形態をとっている。

 この庭は現存する社家の中では最も古く、養和元(1181)年、上賀茂神社の神主・藤木重保による作庭とされている。他の社家庭園では導入した水を池とする例がほとんどであるのに対し、この庭園では幅広い二筋の遣水(やりみず)としているところが特徴的であり、全体として軽快な印象を与えている。神事の前に身を清めた深さ1メートルほどのくぼみや、神山を借景にしながら、降臨石を形取った石組みなどもあり、社家の庭園らしい、すがすがしく清らかな庭園となっている。

 初夏のひととき、都会の騒々しさから離れ、静かないい時間を過ごすことのできた庭園体験であった。

 
(株)ローバー都市建築事務所


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