ローバー都市建築事務所の設計物件や、弊社代表の野村正樹が執筆するコラムなど、
雑誌や新聞に掲載されている情報のご紹介をいたします。
きょうと空間創生術 [253]
近年、京都市交通局の取り組みによって、市営地下鉄駅構内には飲食店や物販店・コンビニをはじめとした、さまざまな店舗・商業施設が誕生している。この駅ナカ商業空間は「Kotochika(コトチカ)」と名付けられ、現在、京都・四条・御池・山科の4駅において展開され、その他の多くの駅でも、コンビニ・売店・駅ナカスイーツの店舗の設置がなされている。駅に新たなにぎわいを創出するだけでなく、地下スペースの有効活用といった観点からもその取り組みは興味深い。
先日、新しく3月25日に増床OPENとなった「コトチカ京都」の南エリアを訪れる機会に恵まれた。京都駅八条口から中央改札に抜ける通路部分は奇麗に改装され、新たに5店舗が建ち並ぶ商業空間へと生まれ変わった。
京都・宇治の老舗の味を気軽にドリンク・スイーツで楽しむことのできる「辻利」をはじめ、雑貨・飲食・コンビニと多彩な店舗が軒を連ねる。
単調となりがちな通路部分のデザインにおいては、”源氏香之図”がそのコンセプトに用いられている=写真。香木をたき、その香を観賞して楽しむ「香道」。日本独自の伝統芸道でもあり、その香りは「かぐ」とはいわず「聞く」と表現され、数種の香を聞き分ける香遊びである「組香」の代表格として「源氏香」がある。
縦5本の線を基本として表現される源氏香之図は全部で52通りの図柄があり、源氏物語全54帖のうち、桐壺と夢の浮橋の2帖を除く52帖の巻名が一つ一つの図柄に名付けられているのである。新しくなった「コトチカ京都」で、源氏物語・香道といった伝統を感じてみるのも楽しみのひとつではないだろうか。