Published 〜メディア掲載情報〜

ローバー都市建築事務所の設計物件や、弊社代表の野村正樹が執筆するコラムなど、
雑誌や新聞に掲載されている情報のご紹介をいたします。

毎日新聞 2017年04月21日号

毎日新聞 2017年04月21日号
 

きょうと空間創生術 [252]

「唐紙が彩る豊かなくらし」

毎日新聞 2017年04月21日号 創業1624(寛永元)年から約400年続く唐紙の老舗「唐長」。御所に関わる武士だった初代千田長右衛門が刀を置き職人の道に進む。本阿弥光悦と俵屋宗達が主宰する京都鷹峯の光悦芸術村の出版事業に参加し嵯峨本の唐紙作りに携わり、以降、唐長は琳派の流れを受け継ぐ特徴的な美意識を今に伝えている。

 先日、唐長11代目・千田堅吉氏と女将・千田郁子氏が主宰する「唐長修学院本店&唐長IKUKOショップ」を訪れる機会に恵まれた。創業以来約300年間は京都・東洞院三条に本店を構えていたが10代目・千田長次郎の頃に現在の地に移転をし、以後この修学院に本店・工房を構えている。

 千田堅吉氏のモットーは、「その人のために唐紙を作る」。400年の年月を経て淘汰され洗練された文様に、唐長独特の色彩感覚を加えることにより、現代でもなお、モダンな文様として多くの人々から支持を集めている。

 併設された、「唐長IKUKOショップ」では、女将自らが選んだ美しい唐長の小さな唐紙の品が販売されている=写真。唐紙のサンクスカード、輪宝文の左うちわ、便せん名刺など唐長限定の品々が多彩に取りそろえられ、豊かで上質な暮らしの提案がなされている。

 「唐長修学院本店」には、先祖代々受け継がれた約650種類もの唐紙版木が厳重に所蔵されている。「朴(ほお)の木」に手彫りで彫られた不変の文様と、純粋な和紙や顔料をつかい掌(たなごころ)で優しくなでる伝統技法を守りながら、400年もの長きにわたり「美」を追求し続けるその世界には無限のひろがりが存在する。古都・京都の厳しい美意識に育まれながら醸成されたその究竟な世界観は、むしろ現代の暮らしにおいてこそ新しく映る。その清新な文様と微妙な色彩が織りなす彩りに囲まれながら過ごした、素敵な春のひとときであった。

 
(株)ローバー都市建築事務所


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