Published 〜メディア掲載情報〜

ローバー都市建築事務所の設計物件や、弊社代表の野村正樹が執筆するコラムなど、
雑誌や新聞に掲載されている情報のご紹介をいたします。

毎日新聞 2017年04月07日号

毎日新聞 2017年04月07日号
 

きょうと空間創生術 [251]

「工夫重ねた「和」空間の可能性」

毎日新聞 2017年04月07日号 春の観光シーズンを迎え、多くの観光客でにぎわいを見せる、京都市・祇園町南側地区。花見小路通を中心とした石畳のその美しい町並みは、「歴史的景観保全修景地区」にも指定され、古き良き祇園かいわいの風情を今も色濃く残している。

 先日、そんな祇園町南側の近くに1軒のホテルを設計する機会に恵まれた。臨済宗総本山建仁寺の塔頭である「常光院」の南側に位置する「花とうろホテル祇園」。全10室の旅の宿は、京都の今を感じるさまざまな工夫がなされている。

 写真は、茶道の水屋をモチーフに意匠をこらした客室キッチン部分。冷蔵庫やワイングラスを効率的に板戸の奥に収納し、漆塗りの天板に銅板の流しを設計している。流しの上に水のハネを少なくするため、白竹でスノコを設け、通り棚は本格的に杉の桟棚となっている。画一的となりがちな、客室のキッチン部分を「和」の表情でデザインすることにより、身近に京都の美を感じる演出がなされている。

 スーペリアタイプとなる計4室の和洋室には、本格的な茶道を楽しむことのできる炉を備えた茶室が計画され、それぞれに天井や床の間など、意匠が異なる設計となっている。常光院を眺めることのできる、バルコニー部分は広く計画し、眼下に寺院を眺めながら、ゆったりとしたひとときを過ごすことのできる工夫もなされている。

 本来、「和」の設計には一定の作法があり、私もその枠組みを大切に考えている。その枠組みの中で工夫を重ねることにより、現代住空間における快適な「和」のありかたを実現することのできた、印象的なプロジェクトとなった。

 
(株)ローバー都市建築事務所


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