ローバー都市建築事務所の設計物件や、弊社代表の野村正樹が執筆するコラムなど、
雑誌や新聞に掲載されている情報のご紹介をいたします。
きょうと空間創生術 [240]
先日、今年3月に明治期当初の姿へと修復工事が完了した府庁旧本館内にある旧議場を訪れる機会に恵まれた=写真。1904(明治37)年完成のこの議場は、現存する議場としては国内最古であり、05(同38)年から、69(昭和44)年までは実際に府議会の議場として使用されていた建築物である。また、その後は2013(平成25)年まで府政情報センターとして活用され、今年から一般公開されている。
2004(平成16)年に、国の重要文化財にも指定されている府庁旧本館と旧議場は、府の設計技師を務めた松室重光の設計による。全体をネオ・ルネッサンス様式でまとめたそのデザインは、西洋近世の意匠様式を巧みに取り入れたものであり、旧議場内部においてもその手法が見て取れる。旧本館と一体化するように北側に突き出す形で配置されたこの議場は、アーチ型の曲線や蛇腹型の装飾が施されたしっくい壁などに代表されるように、壁面に変化を持たせたデザインが特徴的である。南側を正面として、1階に議長席、理事者席、そしてこれらと面するように60席の議員席が半円形となって階段状に計画されている。2階には傍聴席があり、家具・調度品や赤じゅうたん、シャンデリアに至るまで明治時代の様式美が忠実に再現されている。天井は荘厳な折り上げ格天井となっており、壁面にある植物をモチーフとした装飾品が、空間の格調をより高めることとなっている。
築112年、国内現存最古の旧議場。秋のひととき、数々の歴史を重ねたロマンあふれるこの議場空間を一度訪ねてみてはいかがだろうか。