ローバー都市建築事務所の設計物件や、弊社代表の野村正樹が執筆するコラムなど、
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きょうと空間創生術 [239]
先日、京都市上京区、京都御所の北西にある「河村能舞台」を訪れる機会に恵まれた=写真。室町時代には、この地域一帯に三代将軍・義満により「花の御所」が建造され、室町幕府の由来ともなっている。現在の「河村能舞台」は昭和32(1957)年に建造され、来年で築60年を迎えることとなる。
「能」とは、詩、劇、音楽、美術などさまざまな要素が一体となって観客の感動を呼び起こす「総合芸術」であり、簡潔な舞台や演者の動きにより無限の表現ができるように考えられている。観阿弥、世阿弥によって大成された「能」は約600年続く古典芸能でもあり、同時にまた現代に生きる芸術となっている。
能は屋根のある専用の能舞台で演じられる。現在のように屋内に能舞台が設置されるようになったのは明治に入ってからのことであり、それまでは寺院や神社の境内に建てられていた。本舞台と呼ばれるヒノキ板張りの大きさは3間(約5.5メートル)四方あり、ヒノキ板の下には音響効果を高めるために壺が設置されている。
正面奥に見える鏡板には老松が描かれ、その右側には竹が描かれている。右奥の少しくぼんだ舞台の部分は、「地謡座(後座)」とよばれる笛や鼓といった囃子(はやし)方が座る場所であり、舞台手前に見える玉石の部分は「白州」と呼ばれる能舞台が屋外にあった頃の名残となっている。
現在では、一流の場所、晴れの場所という意味でも使われることの多い「桧(ひのき)舞台」。歴史を重ねた桧舞台を見るにつれ、伝統芸能の奥深さを知ることのできたいいひとときであった。