Published 〜メディア掲載情報〜

ローバー都市建築事務所の設計物件や、弊社代表の野村正樹が執筆するコラムなど、
雑誌や新聞に掲載されている情報のご紹介をいたします。

毎日新聞 2016年07月08日号

毎日新聞 2016年07月08日号
 

きょうと空間創生術 [234]

京町家を多機能介護施設に

毎日新聞 2016年07月08日号 先日、京都市下京区堀川松原にある京町家を改装した「小規模多機能型居宅介護施設 松原のぞみの郷(さと)」を訪問する機会に恵まれた。

 小規模多機能型居宅介護施設とは、これまで「施設」で行ってきた高齢者介護を「在宅」で行うための支援施設であり、利用者が可能な限り自立した日常生活を送ることができるよう、さまざまな工夫がなされている。「通い(デイサービス)」「泊まり(ショートステイ)」「訪問(ヘルパー派遣)」など多彩な介護支援機能を、小規模かつ地域密着型として整備することにより、家庭的な環境の下で日常生活上の支援や機能訓練を効果的に行うことのできる施設となっている。

 2007年(平成19)年に開業したこの施設は、当時、築90年の京町家を再生したプロジェクトであり、「おうちに帰ってきたような安らぎ」「町家のぬくもりを肌で感じる」を設計コンセプトとして計画した。

 =写真=は、「松原のぞみの郷」の広縁部分。縁側の拡張工事を行い、光と風を十分に楽しめる場所とし、床板には元の京町家で使用されていた貴重な長さ16.5尺(5メートル)の松の一枚板を転用している。

 設計当初は、単なる日だまり空間として計画を行ったこの広縁部分には、現在、ベンチと物干しと機能訓練用の椅子が置かれ、施設利用者のための憩いの空間として有効に活用されている。日本庭園も奇麗に手入れが行き届いており、緑と風を感じることのできる居心地のいいスペースとなっている。

 京町家の風情のある介護施設として、開業当初より地域の方に愛され、9年を経た今も多くの利用者でにぎわっている松原のぞみの郷。お年寄りのたくさんの笑顔に囲まれながら、介護施設のこれからのありかたを考えるいい機会となった。

 
(株)ローバー都市建築事務所


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