Published 〜メディア掲載情報〜

ローバー都市建築事務所の設計物件や、弊社代表の野村正樹が執筆するコラムなど、
雑誌や新聞に掲載されている情報のご紹介をいたします。

毎日新聞 2016年03月11日号

毎日新聞 2016年03月11日号
 

きょうと空間創生術 [226]

古民家再生に映す京の美意識

毎日新聞 2016年03月11日号 先日、一軒の古民家を改装する機会に恵まれた。奈良県王寺町にあるその木造建築は、先祖より代々大切に受け継がれ、築160年以上、江戸時代末期の建造と伝えられてる。過去にも改修がなされているものの、そのしっかりとした大胆な木組みは古民家特有の力強さを感じさせる剛健な造りの建物であった。

中央に幅約4メートルの大きな通り土間を持ち、両側に居住空間と炊事空間がある典型的な大和地方の古民家である。庭先には牛小屋も残されており、美しい古民家の"かたち"が残されていた。

京町家の再生を数多く手がける私たちにあって、このような古民家の再生は共通する部分も多く、今回の改修においては、京の美要素を現代的に加えることによって魅力ある空間の創出を考えることとなったのである。

一般的に、京の美意識というものは、数寄屋造りの茶室や千本格子に見られるように、飾り気がなく、シンプルかつ質素な要素のなかに美を感じることが多いとされている。また、建築における部材においても、より細く繊細に意匠を見せることに主眼を置き、太く大きな部材を使用しないこともその特徴とされている。

たとえば、地方の床の間は床柱が太いほど立派で高級であるとされているのに対して、京町家における床の間には、細くて木目の美しい床柱が使用されているのも、こうした京の美意識からくるものである。

写真は、新しく生まれ変わった寝室空間。中庭に面して、堀り込み式の書斎コーナーを設置。全体をシンプルに仕上げるとともに、デザインのアクセントとして、茶室建築でよく使用される「下地窓」を計画している。天井の網代の表情とともに全体として落ち着きのある寝室空間を創出している。飾り気のない豊かな美しい空間を実現することのできた印象的なプロジェクトとなった。

 
(株)ローバー都市建築事務所


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