ローバー都市建築事務所の設計物件や、弊社代表の野村正樹が執筆するコラムなど、
雑誌や新聞に掲載されている情報のご紹介をいたします。
きょうと空間創生術 [221]
京都・嵐山に今年3月に新しく誕生した「翠嵐 ラグジュアリーコレクションホテル京都」を先日訪れる機会に恵まれた=写真=。2010(平成22)年まで、ホテル「嵐亭」として営業していた建物を改装した施設である。
渡月橋から、保津川の上流沿いに進んで行くと、突き当たりに純和風の歴史を感じる大きな門がみえる。門の向こうにひっそりとたたずむのが、敷地面積5000平方メートル以上のホテル「翠嵐」である。
門をくぐると、まず綺麗なかやぶき屋根の建物が目に入る。1910年に建造され「八賞軒」と呼ばれていた建物を再生した、水辺の食事処「茶寮 八翠(はっすい)」。明治時代に8人の詩人が集まり、嵐山の四季を詠んだことから「八賞軒」の名が付けられたそうである。この茶寮には、保津川越しに嵐山の風景を楽しむことのできるテラス席も完備されており、気軽に立ち寄ることのできるしつらえとなっている。
さらに進むとその奥には、日本庭園が広がり、その奥にあるのが、男爵川崎正蔵の別荘として1899(明治32)年に建築され、嵐山御殿とも称された「旧延命閣」を改装したレストラン「京 翠嵐」である。明治時代の建築に現代的な照明と座席を配し、本物が持つ素晴らしさを体感することのできる空間が構築されている。
この2棟の歴史ある建築物に加え、客室棟は今回新たに3棟建設され、全39室のそれぞれには、「月」をテーマとした空間デザインがなされている。 また、日本古来の伝統色である「翡翠(ひすい)」「菫(すみれ)」「藍」などをキーカラーとしたインテリアが施されているのも興味深い。
今後、京都において多数のホテル建設が予定されている。これからも進化を続ける伝統とモダンの融合の"かたち”の未来が楽しみである。
=次回は1月8日