ローバー都市建築事務所の設計物件や、弊社代表の野村正樹が執筆するコラムなど、
雑誌や新聞に掲載されている情報のご紹介をいたします。
きょうと空間創生術 [219]
2009年の発売以来、今年で7年目を迎える「ミシュランガイド 京都・大阪」。赤い表紙が特徴的なこのガイドブックは、その地域における、すてきな料理店や宿泊施設を紹介していることで有名である。覆面調査で食事や宿泊を繰り返し、独自に評価するそのシステムは、多くの読者の信頼を得ているひとつの理由でもある。
先日、そんなミシュランガイドの最新刊「ミシュランガイド 京都・大阪2016」が発売された。今回、京都において51軒の宿泊施設が掲載されているのであるが、うれしいことに、設計を手掛けたプロジェクト、旅館「石塀小路 龍吟」とホテル「姉小路別邸」という2軒の宿泊施設が選定されていた。
京都市東山区石塀小路内にある龍吟=写真=は、初登場で五つ星の評価をいただいた。コンセプトは「スモールラグジュアリー」。1階と2階にそれぞれ1部屋ずつ、73m2と100m2のスイートタイプの客室を計画し、京の伝統美を表現しながら、落ち着きと気品ある上質な空間となるデザインを心がけた。浴室をはじめ水回りにも細やかな気配りをし、竹の持つ繊細な美しさを印象的に室内インテリアに計画している。
中京区二条城東にある姉小路別邸は、昨年に引き続き二つ星の評価をいただいた。地上5階建て全7室の小さなホテルではあるが、随所に京都のデザイン手法を現代的に取り入れながら、モダン和風のシンプルな空間構成を実現している。室内には西陣織のファブリックやあんどん・障子といった和の要素を間接照明により、自然に演出を感じる工夫がなされている。
私自身、日々の仕事の中で、京都における現代的和風デザインの展開は、最先端でもあり、今後も独創的な美しい発展をみせていくであろうと考えている。今回の掲載を機に、より一層その思いを強くした、そんな出来事であった。
<文・野村正樹 建築家、ローバー都市建築事務所代表>