Published 〜メディア掲載情報〜

ローバー都市建築事務所の設計物件や、弊社代表の野村正樹が執筆するコラムなど、
雑誌や新聞に掲載されている情報のご紹介をいたします。

毎日新聞 2015年10月30日号

毎日新聞 2015年10月30日号
 

きょうと空間創生術 [218]

城下町・宮津に光

毎日新聞 2015年10月30日号京都の南北をつなぐ京都縦貫自動車道が今年の夏に全線開通した。京都市内から丹後方面への移動がとても便利になり、丹後への観光客増加のうれしいニュースも聞かれる。先日、私の生まれ故郷でもある宮津市に帰省する機会があった。ちょうど市内で「城下町宮津七万石 和火(やわらび)2015」が開催されていたこともあり、母と2人で秋の夜の宮津に繰り出した。

和火は、城下町で栄えた宮津市内に再び光りを当て、毎年この秋の季節に夜の寺町を竹やペットボトル、LEDなどの約1万個の手作り灯籠(とうろう)でライトアップし=写真、ジャズや箏(そう)の演奏、郷土芸能などを自由に楽しみながら、宮津の歴史文化に触れる市民参加型の手作りイベントだ。

3日間にわたり開催されるこの和火では、お寺、通り、教会などでさまざまなイベントが同時開催された。秋の調べを聴きに旧三上家住宅へ向かった。旧三上家住宅2003(平成15)年に国の重要文化財に指定されたお屋敷。宮津藩主・永井信濃守に仕え、その後町人となった三上氏の旧家である。三上家は次第に繁盛し、酒造業・回船業や糸問屋などを営み財をなし、1838(天保9)年には幕府巡見使の本陣となった。戊辰戦争の際には、西園寺公望の宿所となったことでも有名だ。1783年に建造された主屋の吹き抜けは豪壮な小屋組みや竹を並べた野地が見え、床はたたきしっくいの土間で出来ている。修復工事により復元された空間は、懐かしさを感じさせられるものであった。

長年生まれ育った宮津の町でこのようなイベントが開催されていることは、うれしくもあり改めて郷土への思いを強くさせる。夜空に映し出された旧三上家住宅の美しい外観は幻想的な表情であった。そんな歴史を感じる空間で秋の夜長に箏や尺八の調べを聴きながら、ぜいたくなひと時を過ごした週末となった。

<文・山本ちなつ ローバー都市建築事務所チーフプランナー>

 
(株)ローバー都市建築事務所


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