ローバー都市建築事務所の設計物件や、弊社代表の野村正樹が執筆するコラムなど、
雑誌や新聞に掲載されている情報のご紹介をいたします。
きょうと空間創生術 [217]
写真は、京都市上京区・西陣にある「紋屋町 三上家路地のライトアップ」の風景。今月11日から17日までの1週間、夜になるとこのように路地にあんどんを並べ、幻想的な演出がなされている。毎年、この時期になると行われている、「三上家路地のライトアップ」。今年で13年目を迎え、地域における秋の風物詩として、年を重ねるごとに、人気のイベントとして開催されている。路地に並べられたあんどんには、綾部市の黒谷和紙が、土台部分には府特産の北山丸太が使われている。
この三上家路地の空間は、京都市の路地・細街路パンフレットで表紙を飾るほど、京都における代表的な路地として評価されている。それぞれの軒の距離感や通路とのバランスが洗練された造形美を生み出し、その美しい空間のプロポーションは、パリのシャンゼリゼ大通りと対比されるほど、有名な軒の連なりを構成している。
かつて、紋織りの職人たちが軒を連ねて、暮らしていたこの路地空間は、写真家や陶芸家といった、アーティストたちが移り住む芸術活動の場所としても有名になり、このライトアップ期間中には、「生駒啓子陶芸教室作品展」も開催されている。かくいう私も、この路地の中に「紋屋町研究所」を構えている。
近年では、高台寺や嵐山をはじめとして、市内各所の観光地で、さまざまなライトアップが企画・開催されているが、このような地域住民による小規模な夜間演出も趣があり、その新しい魅力を再発見することとなる。日ごろ見慣れた風景とは、違う表情をみせる夜の路地空間。慣れ親しんだ、町の風景であるからこそ、むしろ新鮮に感じた秋の夜のひとときであった。