ローバー都市建築事務所の設計物件や、弊社代表の野村正樹が執筆するコラムなど、
雑誌や新聞に掲載されている情報のご紹介をいたします。
きょうと空間創生術 [214]
先日、京都市東山区に一棟の賃貸マンション「エルベコート東山七条」が完成した。鴨川左岸(東側)川端七条の側道沿いに位置するこのマンションは、京阪七条駅からもほど近く、京都市内のみならず、大阪へのアクセスにおいても交通至便な場所に建設されている。また、近隣の貞教小学校跡地には「京都美術工芸大学」の誘致が予定されており、さらには鴨川を隔てた崇仁地域において「京都市立芸術大学」の移転が決定していることもあり、今後、芸術文化系の学生たちでにぎわいをみせる場所として、注目を集めているエリアでもある。
写真は、エルベコート東山七条の外観。京町家の長屋のたたずまいをモチーフに、和風モダンで仕上げた落ち着きのあるデザイン構成となっている。右側にあるのは、2階・3階への各室へのアプローチとなる玄関ホール部分。その玄関ホールの左側に連続して見えるそれぞれの格子戸は、1階部分の貸室への玄関として計画されている。
通常、賃貸マンションにおける1階部分の間取りは、通りに面して居室やバルコニー部分が計画されることが多く、そのプライバシー確保のため、目隠しパネルやフェンスを用いて視線をさえぎる設計となることが多い。そうした、1階部分における計画のあり方を一度見直し、このエルベコート東山七条については京の風情を意識した、連続した京町家の風景を創出するよう心がけている。
格子戸と聚楽壁・よろい貼りの板壁にレトロな照明を計画し、床には枕木を敷き詰め、植裁をあしらった。街路に対して、積極的に町並みを意識したデザインを取り入れることによって、建物価値の向上を図る。そんな思いを、かたちにすることのできた印象的なプロジェクトとなった。