ローバー都市建築事務所の設計物件や、弊社代表の野村正樹が執筆するコラムなど、
雑誌や新聞に掲載されている情報のご紹介をいたします。
きょうと空間創生術 [212]
先日、京都市中京区にある旅館「NISHIYAMA RYOKAN」の庭園を再整備する機会に恵まれた。「NISHIYAMA RYOKAN」は昭和30(1955)年に西洞院丸太町の地で創業され、現在の御幸町二条の地に移転したのは、今から45年前の昭和45(1970)年のことである。以来、古都・京都の中心で京都の魅力を、訪れるゲストに伝え続けている歴史ある旅館として、人々に親しまれている。
館内に一歩足を踏み入れると、メインロビーの正面に奥行きのある和風庭園が計画されている。=写真=改修前のこの庭園は、池の部分ではニシキゴイが飼育されており、木々が生い茂るどちらかといえばレトロな雰囲気のする、昔ながらの和風庭園であった。この度、再整備を計画するにあたり心がけたのは、光と庭のコントラストを巧みに利用した、表情豊かなモダン和風庭園への再構築であった。
既存の庭園にあった、つくばいや灯籠(とうろう)・滝石組みなどを利用しながら、全体的にすっきりとした上品な庭園を計画。ニシキゴイのいた池には、改良を施し、池の一部に水盤を設置した。水盤と池の間の段差に小さな滝を利用しながら、間接照明を設置することによって幻想的な「水」のある風景を演出している。更に、スポットライトやあんどん型照明を効果的に配置することによって、光と庭のコントラストを楽しむことのできる雰囲気のある庭園空間が誕生した。
近年のLED照明の進歩により、従来では表現することのできなかった、多彩な空間表現と演出が可能となってきている。これからの新しい庭園デザインの可能性を感じることのできた、「NISHIYAMA RYOKAN」の庭園改修プロジェクトであった。