ローバー都市建築事務所の設計物件や、弊社代表の野村正樹が執筆するコラムなど、
雑誌や新聞に掲載されている情報のご紹介をいたします。
きょうと空間創生術 [211]
京都市下京区四条烏丸交差点に位置する、「COCON KARASUMA(古今烏丸)」。1938(昭和13)年に建設された旧丸紅ビルを再生し、2004(平成16)年にリニューアルオープンされた、複合商業施設である。第二次世界大戦後は進駐軍に接収され、京都の本部としても使用されていた、築76年の歴史あるビルディングである。
烏丸通に面したファサード部分には、外壁を覆うようにガラスのカーテンウォールが設置され、1624(寛永元)年から続く唐紙の老舗「唐長」に伝わる唐長文様「天平大雲」が緑色で鮮やかに描かれている。
先日、そんな「COCON KARASUMA」の1階にある、唐紙を中心としたセレクトショップ「KIRA KARACHO」を改装する機会にめぐまれた。2004年のオープンから10年が経過したテナント空間のイメージを一新し、白を基調とした華やかな空間へとリニューアルした店舗改装事例である。
美しい独特の輝きを放つ「唐紙」。その伝統模様の印刷には、雲母と呼ばれる花こう岩などに含まれている鉱物が使用されている。雲母すりと呼ばれる手法で、一枚一枚、丁寧に手刷りで仕上げられた、その美しさは、「唐紙」以外では表現することのできない独自の世界を創り上げている。
「KIRA KARACHO」が伝えるのは、「古き良き伝統の世界」「今の世の新しい美の世界」「異なるものとの融合する世界」。そんな「唐長」の世界観を、改装を通じて体感することのできた印象的なプロジェクトであった。