Published 〜メディア掲載情報〜

ローバー都市建築事務所の設計物件や、弊社代表の野村正樹が執筆するコラムなど、
雑誌や新聞に掲載されている情報のご紹介をいたします。

毎日新聞 2015年04月24日号

毎日新聞 2015年04月24日号
 

きょうと空間創生術 [205]

伝統と現代が融合する和空間

毎日新聞 2015年04月24日号 先日、京都市の西陣・大宮にある京料理店「萬重」を訪れる機会に恵まれた。1937(昭和12)年の創業以来、のれんを守り続け、こだわりの味を現代に伝え続けている。

 館内には、二つの京町家を巧みに組み合わせ、大小さまざまな座敷や宴会場が合計20室整備されている。調度品や、坪庭や座敷庭も綺麗に手入れが行き届いており、四季折々の情緒溢れる風景を楽しみながら、心あたたまる京料理を楽しむことができるしつらえとなっている。

 写真は、「和紙のお部屋」と名付けられた座敷の風景。左側に大きく見える照明ディスプレーは、京都府出身の和紙デザイナー、上七軒の歌舞練場のどんちょうも手掛けた堀木エリ子氏による作品。既存の襖(ふすま)を取り外し、もともとあった廊下の部分を巧みに利用しながら、効果的な演出をおこなっている。和紙の持つ柔和な光が、和室空間と見事に融合し、全体として美しい見事な空間に仕上げられている。波形模様に漉(す)き上げられた、和紙デザインの美しさもさることながら、むしろ和紙全体から放たれる空気感や、全体としての気配を創りだす美しさにおいて、今までありそうでなかった和空間の新しい試みが感じ取れる。なんとなく、その光に安らぎとぬくもりを感じるのは、私たちが慣れ親しんだ障子越しの光にも似た風景であるからかもしれない。

 この他にも、館内には屏風(びょうぶ)をモチーフにした大きな和紙照明のある大座敷や、シャンデリアカバーが和紙で製作されている宴会場もあり、それぞれにうまく和みの空間が演出されている。改めて、和紙造形の持つ魅力とその可能性を再認識することのできた、すてきなひとときであった。

 
(株)ローバー都市建築事務所


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