ローバー都市建築事務所の設計物件や、弊社代表の野村正樹が執筆するコラムなど、
雑誌や新聞に掲載されている情報のご紹介をいたします。
きょうと空間創生術 [204]
DIYとは近年広がりをみせつつある、セルフビルドによる工事形態のひとつであり、「Do It Yourself」を略した言葉である。「自分でできることは自分でやろう」という理念のもとに、お金を払って専門業者に依頼するのではなく、自分たち自身で何かを作ったり、改修したり、装飾したりする活動のことである。
写真は先日、完成した、京都市北区大宮にある織屋建の京町家の改修事例。若いご家族のための住まいである。西陣地域に多く見られる「織屋建(おりやだて)」の京町家。家の奥に大きな吹き抜けを持つ織り場スペースをつくり、ジャガード織機の騒音を、表通りに聞こえにくくする工夫がなされた独特の京町家建築様式である。
その織り場スペースを今回はリビングダイニングへと転用することにより、開放的で明るい空間を実現した。白い壁に塗られているのは、「本漆喰(しっくい)」。左官職人の指導を受けながら、お客様自身で仕上げられたプロ顔負けの見事な壁面である。他にも、造園や塗装・古建具の買い付けまで、自分たちで出来る部分はなるべく自身で仕上げることにより、職人と二人三脚でつくりあげた、見事な京町家再生住宅が完 成した。
DIYによる京町家再生。今まで、数件の経験のある改装工事であったが、改めて今回、感じたことがある。それは、DIYという過程を通じて生まれる住まいへの愛着心。これからはじまる暮らしの中で、一緒に創り上げた思い出は、すてきな未来を築くことのできる、かけがえのない財産となる。そのような思いを強く感 じた意義のあるプロジェクトであった。