ローバー都市建築事務所の設計物件や、弊社代表の野村正樹が執筆するコラムなど、
雑誌や新聞に掲載されている情報のご紹介をいたします。
きょうと空間創生術 [203]
写真は、京都市左京区川端二条東入ル北側にあるフレンチレストラン「ビストロ ヴェルジュ」。今月20日に新しくリニューアルオープンした、フランス家庭料理の味が気軽に楽しめるオーナーシェフが経営するビストロスタイルのレストランである。
30平方メートルほどの小さな店内には、14席の座席をレイアウトし、フランスのボルドー地方を意識したシックでモダンなインテリアを計画した。全体を暖色系でコーディネートすることにより落ち着いた雰囲気を醸成するよう心がけた。客席上部には、大胆に吹き抜けを設置し、小さいながらも開放感のある 伸びやかな客席空間を実現している。
写真からは想像がつきにくいが、このフレンチレストランは「うなぎの寝床」に建つ京町家の再生事例である。吹き抜け部分に見える2本の梁は、京町家を構成する床梁をそのまま転用したものである。老朽化が進行している柱や梁を丁寧に補修しながら、耐震補強を施し、今後末永く安心して使用することのできるよ う改修をおこなった。壁面は塗装仕上げとし、フレンチレストランにふさわしい、おしゃれで上質な雰囲気を感じることのできる室内空間となっている。今まで、数多くの京町家再生をおこなってきた私にとっても、今回の改装は新しい感覚を感じることのできる事例であった。シンプルでありながらも、京町家の持つ魅力を新しいかたちで引き出すことができたのではないかと思っている。
1998年の創業以来、17年間、地域のお客様に愛され続けてきた、フレンチレストラン「ビストロ ヴェルジュ」。今回の改装を機に、さらに末永く愛される建物とレストランであってほしいと願っている。