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毎日新聞 2014年12月19日号

ローバー都市建築事務所代表の野村正樹が執筆するコラム「きょうと空間創生術」の紹介です。

毎日新聞 2014年12月19日号
 

きょうと空間創生術 [197]

閉館を迎える四条京町家

毎日新聞 2014年12月19日号 写真は「きょうと空間創生術」の76回と92回でも紹介した、四条西洞院(京都市下京区)にある、「四条京町家」。四条通の北側に位置する美しい本二階建の京町家は、1910(明治43)年に建造された104年前の建築当初のスタイルをそのまま今に伝えている。内部には現在もたき火をたいて使用可能な”おくどさん”のほかに、昔懐かしい五右衛門風呂や水琴窟もあり、京町家独特の伝統的様式と生活文化が、そのまま現在まで保存されている貴重な建物である。

 四条通に唯一改変されていない最後の「京町家」である、この「四条京町家」が、現在、存続の危機を迎えている。もとは、鋼材卸商「田中文商店」の別宅隠居所として建設された表屋造り。2002年〜09年までは、年間5万人が訪れる観光施設「市伝統産業振興館」として京都市が運営していた。その後、NPO法人「四条京町家」により、建物だけでなく、生活文化、京のまちの文化を体感することのできる施設として 09年から一般に公開してきた。

 しかしながら、この度、多額な固定資産税など経済的な事情からその運営は困難となり、12月20日をもって、いったん「四条京町家」は閉館をして、104年の歴史に幕を下ろそうとしている。現時点では、来年3月に取り壊される予定となっている。現在、その保存活用を目指して、新しく移築のための支援をしてくれる有志や団体を募っている。解体されてしまうには、あまりに惜しい歴史のある伝統的京町家であるからこそ、その閉館の便りは、私にとって悲しい知らせであった。

 
(株)ローバー都市建築事務所


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