きょうと空間創生術 [192]
先日、京都市中京区新町姉小路下ルにある一軒の京町家を訪れる機会に恵まれた=写真。1階のひさし瓦部分に3体のシーサーを載せ、2階部分を出格子にした、個性的な外観デザインが特徴的なこの京町家は、今年7月に新しくオープンした、町家ラウンジ「新町1888」である。京都ホテルオークラの直営店という こともあり、館内ではホテルメイドのパン販売や喫茶軽食、ラウンジバーも整備され、気軽に京町家空間を楽しむことのできるスペースとなっている。
以前は、丹後ちりめんを扱う会社として使用されていたこの京町家は、1999(平成11)年に京都市の歴史的意匠建造物に指定されている。まず、目をひくのは、べんがら格子と紅(あか)い塗り壁で全体を彩られた、真っ赤な京町家のその外観である。1階正面には、孔雀(くじゃく)の柄をした大きなステンドグラスがはめ込まれ、2階部分にも円形や方形の色鮮やかなステンドグラスが設置されている。玄関脇には、京都で一番最初に設置された「郵便差出箱一号丸型」ポストが保存され、更にその上部には美しくデザインされた、防火壁の一種である「卯建(うだつ)」も取り付けられている。
内部空間に足を運ぶと、ステンドグラスからきらめく光が館内に差し込む、和洋折衷の幻想的な空間を感じることができる。伝統的な「和」の坪庭や座敷空間もきちんと保存しながら、随所に「洋」の要素を取り入れ、全体的に美しいモダンな内装に仕上げられている。
新しい京町家デザインの可能性に触れることのできた秋のひとときであった。