きょうと空間創生術 [190]
宇治市にある世界遺産「平等院」。今春には、阿弥陀堂(鳳凰堂)の改修工事も無事完成し、創建当初のきらびやかな姿を拝観することができる。お堂の柱や扉、瓦や鳳凰像も新しくリニューアルされ、改修前の古風な趣から一転、絢爛(けんらん)たる姿となっている。
先日、そんな平等院表参道沿いにある一軒の茶店を改装する機会に恵まれた。「泉園銘茶本舗」は寛永元(1624)年創業、約390年の歴史を誇る京の老舗である。現在の当主は15代目にあたり、伝統ある宇治茶一筋に力を注ぎながら不老門・泉園銘茶本舗を継承している。
長年使用され、老朽化が進む木造店舗に効率的に耐震補強を施しながら、平等院表参道沿いにふさわしい「和の商業空間」への改装工事が進められた。茶箱や茶つぼをディスプレーに使用しながら、スポットライトで効果的に壁面を演出。明暗の差をうまく利用しながら、色とりどりの商品が白色の壁に映えるよう、照明計画をした。
また、参道に面したエリアには、和傘の伝統技法を現代的に応用した「日吉屋」のペンダント和紙照明を設置し、道ゆく観光客に対して、和の雰囲気を伝える装置としての機能を持たせた。床面には、大判の玄昌石タイルを使用し、風情に落ちつきを持たせるとともに、高級感を演出している。また、アクセントカラーにもえぎ色を用いることによって、全体的に和の上質な空間を創出し、回遊性を持たせることによって、店舗内部にリズムを与えている=写真。
環境省の「かおり風景100選」にも選定された「平等院表参道」。お茶の香りが漂う心なごむ歴史街道に、また新しいひとつの空間「泉園銘茶本舗」が誕生した。