毎日新聞 2014年07月25日号


きょうと空間創生術きょうと空間創生術
 

和紙造形の魅力と可能性きょうと空間創生術

 先日、京都府出身の和紙デザイナー、「堀木エリ子」氏の新しいショールームを訪れる機会に恵まれた。「建築空間に生きる和紙造形の創造」をテーマ に幅広く活動する堀木氏の和紙造形は、世界的にも高く評価され、東京ミッドタウンやペニンシュラ東京・成田国際空港をはじめとして、さまざまな大型プロジェクトにも使用されている。

 ショールームに一歩足を踏み入れると、そこには、和紙と光が織り成す幻想的な情景が目の前に現れる。=写真。手漉(す)きの和紙が織り成すその神秘的な魅力 は、見る角度やライティングの強弱によっていろいろな表情をみせ、その移ろいと奥深さを新しく知ることとなる。20メートルもの巨大な和紙や幾層にも重ねて作成された和紙、立体的に作成された和紙等、従来の技法では作成することのできなかった手漉き和紙の技法を開発することにより、和紙造形の可能性を大きく広げることとなった。

 堀木氏自身、和紙自体の作品の美しさも大切であるが、むしろ和紙から放たれる空気感や和紙の後ろにある気配をどう創りだすかということも大切であると考えていると述べている。手漉き和紙を透過してさしこむ柔らかな光。なんとなく、その光に安らぎと温もりを感じるのは、私たちが慣れ親しんだ障子越しの光にも似た風景であるからかもしれない。

 新しいショールームは、京都市中京区御池高倉南西角「吉忠ビル」4階にある。これからの、和紙造形の持つ魅力とその可能性に深く触れることのできた素敵なひとときであった。

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