毎日新聞 2014年06月13日号


きょうと空間創生術きょうと空間創生術
 

古本とカフェが醸成する新空間きょうと空間創生術

 前号の183回で紹介した、福知山市・広小路商店街に先日新しく誕生したした複合コミュニティー施設「まちのば」。「旧福知山信用金庫広小路支店」を改装して新しく生まれ変わったリノベーション施設である。

 天窓からの自然光が明るく降り注ぐ階段をのぼり、2階に一歩足を踏み入れると、古本とコーヒーを楽しめるブックカフェ「モジカ」の内部空間が広がっている=写真。銀行建築のもつ独特のレトロな雰囲気をうまく再生しながら、落ちつきのある空間のなかで、ゆっくりとした時間を過ごすことのできるよう計画した。棚一面には約3000冊もの古本が並べられ、懐かしさを感じさせるとともに、店舗の重要なデザイン要素の一部となっている。カフェ部分にはカ ウンター席16席含む、合計46席の客席が計画され、それぞれの場所に応じて異なるデザインの家具が配置されている。店内では、福知山淑徳高校の生徒さんのプロデュースによるスイーツも販売され、地域参加型による運営形態が試みられている。

 近年、全国的に広がりを見せつつあるカフェと書籍販売を融合させた「ブックカフェ」。このような古本とカフェという組み合わせ形態は、珍しいケースであろう。しかしながら、今回のようにレトロビル再生との相性を考えたとき、その相乗効果による空間品質の向上には大きく寄与するものがあると考える。古くて良いもの掛け合わせることにより、新しい空間へと昇華させる。京町家再生にも通じる、ひとつの新しい好事例を実現することのできた有意義なプロジェク トであった。

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