毎日新聞 2014年05月02日号


きょうと空間創生術きょうと空間創生術
 

新しく生まれ変わっていく嵐山きょうと空間創生術

 4月14日、京都市右京区の嵐電嵐山駅前に新しく一軒の「体験型商業施設」が開業した=写真。京町家風の外観と大きな瓦屋根が特徴的なその施設は、「嵐山 昇龍苑」と名付けられ、約1500平方メートルの広大な敷地には、2階建て延べ560平方メートルの店舗面積が計画されている。館内には食品や工芸など京都の老舗16店舗を集め、運営されている。

  内部に一歩足を踏み入れると、体験型の商業施設にふさわしく、にぎわいのあるオープンスペースが多数設けられている。「老舗はたのし」をメインテーマ に、訪れる観光客に対して、楽しい時間と空間体験の提供を目指しながら、さまざまな工夫がなされている。

  1階部分は「京の味わいフロア」として、京漬物・八つ橋・佃煮・洋菓子・宇治茶などの老舗店舗が軒を連ねており、庭を眺めながら、ゆったり食事を楽しむことのできる休憩スペースも整備されている。2階部分は、「京の伝統工芸フ ロア」。清水焼・和装小物・京象嵌(がん)・竹工芸品等の老舗によって、繊細かつ美しい、最高品質の京の逸品が販売されている。多目的スペースでは、季節に応じ て、多彩な催事をおこなうこともできるようになっている。

 1980年代、嵐山といえばタレントショップが立ち並ぶ、バラエティー色の濃い観 光地であった。ここもかつてはタレントショップが建てられていた場所である。現在、同じく嵐山にある「美空ひばり座」も解体が進められ、商業施設の建設が予定されている。今後、新しく正統派の観光地として生まれ変わろうとしている「京都・嵐山」。今後の嵐山の方向性を位置づける、ひとつの商業施設が今春開業したのである。

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