毎日新聞 2014年04月04日号


きょうと空間創生術きょうと空間創生術
 

次の世代へと伝える風景きょうと空間創生術

 新しい年度を迎え、新生活が始まるとともに、消費増税の影響もあり、京都市内ではこの春多くの新築物件が完成を迎えた。写真は、先日、中京区新町三条に完成した集合住宅「モンヴェール烏丸御池」。市内中心部、鉾町に位置する、5階建ての鉄筋コンクリート造のワンルームマンションである。約210平方メートルの敷地には、1階部分正面に1軒の商店と、2〜5階の上層階に合計16室のワンルームマンションが計画されている。

 ブラウンを基調とした、上品なタイル貼りの外壁にガラスパネルによるバルコニー手すりで構成された落ち着きのある外観は、飽きのこないシンプルなデザインとなっている。軒庇部分を深く取りながら、瓦屋根と木製格子、のれんによる修景を施すことによって、最近の京都市景観条例にも配慮した外観デザインとなっている。

 マンション部分のエントランスへと至るアプローチ部分には、路地風の風情を計画し間接照明によって、開放感のある玄関ホールへと、雰囲気のある通路空間を演出している。室内インテリアにも工夫を凝らし、新生活にふさわしい、ぬくもりのあるデザイン構成がなされている。

 近年、新しく建て替えが進められている、京都市中心部地域。未来の京都の都市風景を考えるとき、周辺の町並みにも配慮した、美しいデザインの建築をつくることは極めて重要であり、私たち建築家の責務であるとも考える。京都で育まれた先人の智恵を、時代にあわせてかたちを変えながら、次の世代に伝え続けていくことが、すなわち伝統の継承といえるのではないだろうか。

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