生活に「ぬくもりと優しさ」
先日、京都市中京区烏丸二条に近くにある、1軒のマンションリフォームをする機会に恵まれた。1990(平成2)年に建設された、地上6階建ての鉄筋コンクリート造のそのマ ンションは、築後23年が経過し、水廻りをはじめとした各部所において、改修の時期を迎えていた。
最上階に位置し、ゆったりとした約96平方メートルの床面積を持つ、リフォーム物件は、全体として中庭「コ」の字型の間取りをもつ少し特殊な平面プランであった。今回、結婚されるにあたり新居を構えることとなった若い夫婦は、落ち着きとぬくもりのある明るい空間を希望されていた。標準的な中廊下式の3LDKタイプのプランと異なり、随所から自然光を取り込むことのできる、最上階の「コ」の字形・平面プランは改修計画を考える上でも魅力的であり、ぬくもりの空間創生を実現するには好都合な環境であった。
写真は、約18畳の新しくなったリビング空間。左側の大きな窓からは、光が安定している柔らかな北面採光をシェードで拡散し、右奥のコーナーサッシからの自然光と調和を図りながら優しい明るさを醸成している。奥のリビングボード上部部分は既存のトップライトを活用し、天空光による光のコントラストを演出 している。
インテリアにはナラフローリングにタモの収納家具やチェリーのテーブルを採用し、木の持つぬくもりを肌で感じるとともに、自然素材である珪藻土(けいそうど)と間接照明で全体空間を穏やか、かつ上品にまとめ上げている。 これからの新しい生活のステージとして、機能することとなる「ぬくもりと優しさの居住空間」。居住環境が生活に与える、幸福や豊かさの可能性を改めて考えることのできた素敵なプロジェクトであった。
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