屋上にみる和の庭園空間
先日、京都市中京区にある、ビルディングの屋上庭園を整備する機会に恵まれ た。烏丸通に面したそのビルディングは地上5階建となっており、1階は店舗、 2・3階は事務室、4・5階は住宅としてそれぞれ使用されている。5階部分には小さな屋上庭園があり、庭園を「コ」の字型に取り囲むように玄関・座 敷・茶室が計画されている。
東山の山々を遠景の借景に見立てながら、穂入りの四つ目垣で市街地のビル群を 隠すように山と空を美しく切り取ることから改修は始まった。手前の玉砂利敷 から左へと流れるように飛び石を配し、茶室へのアプローチ部分となる「延段」 には「あられこぼし」とよばれるデザインを施しながら計画を 行った。下草には杉苔(こけ)と吉祥草(キチジョウソウ)をそれぞれ用い、小さな四つ目垣の裏には灯籠(とうろう)とつくばいが据えられている。灯籠のあたりには、モッコクの木と桜の木、手前側にはモミジの木とナンテンを植裁し、小さな庭園でありながらも、四季折々に豊かな風景を楽しむことのできるように工夫がなされている。
このような、三方を建物に囲まれた屋上での中庭はいわば大きな鉢植え(盆栽)のようなものであると考えられる。近年、人工軽量土壌技術の進歩はめざましく、多彩なデザインの屋上緑化スタイルを実現することが可能となっている。併せて、性能のいい貯水・排水設備や透水・耐根シートも開発され、以前では不可能であった樹木の植裁も可能となっている。
写真は和室縁側空間から、東山を望んだ方向。都市の緑化を考えるにあたって、屋上空間の活用は重要な要素となる。京都における屋上緑化のありかたを、いい形で提案することのできた有意義なプロジェクトとなった。
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