新撰組発祥の地 八木家住宅
先日、中京区「壬生寺」近くにある、同市指定有形文化財である八木家住宅=写真=を訪れた。八木家住宅は、 幕末、京の治安維持のために活躍した「新選組」の近藤勇、土方歳三らの宿所であったこともあり、壬生屯所旧跡としても広く知られている。
八木家は天正年間(室町時代)に、京・洛西壬生村に居を構えて以来、当代で15代を数える旧壬生村きっての名家である。壬生村は京都守護職や所司代とも大変深い関わりがあり、そのような理由から、幕末になり、江戸より浪士を預かり、後の“新選組”発足にも尽力することとなった。文久3(1863)年春、徳川14代将軍、家茂上洛の警護の目的で京に上った浪士隊のうち、八木家を宿所としていた近藤勇ら13名が、浪士隊から分かれて京都守護職・松平容保のお預かりのもとで新撰組を結成。八木家の右門柱に「松平肥後守御領新選組宿」の表札を掲げたのがそのはじまりである。
建物は長屋門が東に開きその奥に主屋が南面して建つ格式あるスタイル。その造営は今から約200年前、文化6(1810)年である。母屋は西端に通り土間を奥まで配し、土間に沿って居室を3室ずつ2列に計画する、市中においては珍しい形式となっている。入口は土間部分に開くほかにも、東南隅に式台を備えた本玄関を備え、その奥北側に仏間奥座敷を1列に並べてることによって、格式ある構成をとっている。一方、長屋門の外観は腰に下見板を張りながら、与力窓や出格子窓を開くなど、当時のおもかげがよく保存されている。
京町家の風情を持ちながら、格式ある民家の形式をうまくとりいれた「八木家住宅」。奥座敷にある刀傷は幕末当時の新撰組の歴史を今に物語っている。
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