京都景観デザイン進化論
2007(平成19)年より、京都市の市街地のほぼ全域で導入された「京都市新景観条例」。歴史的な京都の町並みを保全するため、高さ規制を旧基準より引き下げたほか、和風の外観デザイン基準も新たに導入し、屋上の広告看板を全面禁止するなど屋外広告物の規制が強化されている。現在では、京都市内のあちこちで、多様な新デザイン基準の建物がみられるようになってきた。
写真は前回でもご紹介した、姉小路小川にあるホテル「姉小路別邸」のエントランスの外観部分。両脇にある高さ3mの防火塀を建物デザインに取り込みながら、瓦屋根と木製格子によって現代的な「和」のたたずまいを表現している。
この近辺の地域は、「旧市街地型美観地区」に指定され、軒庇の設置や、3階以上の外壁面の後退、歴史的町並みと調和する色彩の使用等が義務づけられている。建築基準法と京都市の定める景観基準の双方を満たしながら、いかに美しい建築をつくりあげていくか。私たち建築家にとっては、腕の見せ所であり、京都で育まれた伝統美のデザインをどのように現代において再構築していくかが最大のポイントとなる。
新景観条例の施行後、約6年が経過し、その景観デザインについてはさまざまな試行錯誤が繰り返されている。「必要は発明の母」ということわざがあるが、今回の景観規制によって京都特有の工夫された建築デザイン形態が開発され、日々、独自の進化を重ねている。地球上のオーストラリア大陸において生物が独自の進化をとげたように、100年後の京都の町並みは、国内の他都市と比べて独特の雰囲気を形成していることになると考えるのは私だけであろうか。
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