姉小路別邸にみる京都の滞在空間
先日、世界遺産・二条城の近く、京都市中京区姉小路小川に「姉小路別邸」というホテルを設計する機会に恵まれた。地上5階建てのオールツインタイプ7室の客室があるスモールラグジュアリーホテルである。
京都の「伝統美」と「現代美」の融合を強く意識したデザインを行うことにより、京都の魅力を再認識できるホテルを目指して設計は進められた。メインロビーには、世界的和紙デザイナー「堀木エリコ」氏の作品を中心に、京都の地酒も楽しむことのできるバースペースを併設。和紙と間接照明が織り成す柔らかい雰囲気は、古都の風情を現代的に演出している。
また、客室内においては、京都で育まれた「和」のデザインを基本としながら、家具や照明、調度品に至るまで、京都スタイルにこだわったインテリア計画を行っている。ヘッドボードやクッションなどの布小物は、京都西陣の老舗「HOSOO(細尾)」の美しいファブリックで統一されている。さらにプライベートテラスが計画された、最上階のプレミアムルームにおいては、究極の眠りと美意識を追求した京都の寝具メーカー「イワタ」の寝具を採用している=写真。
画一的なモダンデザインが多く見られるホテル客室内のデザインにおいて、京都ならではの滞在空間を構築することは、他都市間との差別化を図るうえでも重要なことであり、京都が持つ魅力をこのようなかたちで発信し続けることは、今後の京都観光業界にとっても取り組むべき、ひとつの課題であると強く感じることのできた有意義なプロジェクトであった。 |