「食」と「空間」の関係性
先日、京都駅前地下街「Porta(ポルタ)」内にある、一軒の店舗空間を設計する機会に恵まれた。京都で初めての本格的な地下街として、33年前の昭和55(1980)年の開業以来、飲食店や物販店・お土産を中心に、現在では約130余の店舗が軒を連ねている。
京漬物「西利」がプロデュースする新しい「日本食」のかたち。京都を中心とした国内厳選の名店の品々を取りそろえながら、私たちが忘れかけている「日本食」の豊かさを再認識することのできる店舗空間としての機能がデザイン計画には求められていた。
地下街の柱を取り囲んだ、約2坪ほどの小さな空間。地下街という自然採光のない人工的に構築された特殊な環境のもとで、色とりどりの食品を鮮やかに演出するために、照明には演色性の良いタイプのLED照明を採用している。また、基本的に間接照明によるディスプレー計画を行い、商品に対して均一に光を照射するよう照明計画を行った。
柱周りには、天然ケヤキの厚板による彫込サインをランダムに配置し、単調となりがちな柱面のデザインにリズムを与えた。商品を陳列する棚材には竹を使用し、竹の持つ和の雰囲気と、上品で清潔感のある環境の構築を心掛けた。冷蔵ショーケースにも竹を貼り込み全体としての統一感を持たせるとともに、アクセントカラーには濃いネズミ色をとりいれ店舗空間をスタイリシュなデザインでまとめあげている=写真。
私たちが健康で幸せに生きるための力の源は「食」、すなわち、ごはんにある。色とりどりの豊かな自然食品に囲まれながら、改めて「食」と「空間」の関係性とその重要性を再認識することのできた、有意義なプロジェクトであった。
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