毎日新聞 2013年06月21日号


きょうと空間創生術きょうと空間創生術
 

1万本のアジサイ 福知山觀音寺きょうと空間創生術

 先日、福知山市にある「丹州 觀音寺」を訪れる機会に恵まれた。本尊に霊仏観音を祭り、高野山真言宗寺院である「觀音寺」は、別名「あじさい寺」ともよばれ、広大な境内には、100種類約1万株ものアジサイが植えられている=写真。

 「觀音寺」の歴史は古く、奈良時代の養老4(720)年、インドの帰化僧である法道仙人が霊木に十一面千手千眼観世音菩薩像を刻み、草堂に安置したのがその始まりである。その後、応和元(961)年には、踊り念仏で有名な空也上人により七堂伽藍(がらん)が建立され中興されたと伝えられている。中世以降も、北条氏や足利尊氏などのひ護を受けて発展し、近世には綾部藩主九鬼(くき)氏をはじめ、1300年もの長きにわたり人々の崇敬を広く集めてきた、由緒ある密教寺院である。

 福知山市の東方、由良川の南にある小高い丘の北麓に約3200坪の境内の北側に、参道と仁王門を構え、南に延びる参道の西側に庫裏(くり)や表門、土蔵など本坊が、東側に本堂などの主要伽藍が配されている。桁行五間、梁行五間の規模をもち、正面に一間向拝を付けた様式の本堂は、江戸中期の天明4(1784)年の建立で、府の指定文化財にもなっている。この時期見事な花を咲かせる、色とりどりのアジサイは、昭和35(1965)年頃より少しずつ植樹され、現在では境内いっぱいに100種類約1万株が植えられている。

 関西花の寺二十五霊場の一番札所にも指定されている、「福知山 觀音寺」。浄土のような眺めのなかで、境内の美しい花や自然を通じ、人々と寺院とのつながりを強めながら、人生や社会を明るく豊かにすることが大切であると感じた初夏のひとときであった。

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