町家の「のれん」は広告物?
1200年の悠久の歴史の中で培われた京都の伝統産業の魅力を発信するため、京都市では春分の日を「伝統産業の日」と定め、今年も3月21日に市内各地できものや工芸品に関する多彩なイベントが開催された。
中京区の本能学区一帯においては、「染め」に関するイベントが催行され、油小路通界隈の町家には、日本の伝統色40色で染め上げられた色とりどりの「のれん」がそれぞれの軒先に架けられ、「染めのまち本能」にふさわしく、町並みに彩りを添えた。浅葱(あさぎ)色や牡丹(ぼたん)色といった鮮やかなその色合いは、日本古来の美しさを今に伝える伝統色ならではの味わいを持っており、京町家の佇(たたず)まいともよく似合う。
現在の京都市景観条例においては、暖簾(のれん)は屋外広告物であるとされ、その設置や色彩・大きさ等には一定の制限がかけられている。設置については、京都市登録の屋外広告業指定業者の施工によるものでなければならず、更に2平方メートル以上の大きさについては、京都市の許可が必要である。一般的な一間(1.82メートル)の間口に暖簾を設置しようとした場合、1.1メートル以上の高さを超えるものについては、許可が必要という計算になる。
京町家に設置される暖簾の色彩については、先日の4月1日の条例改正により、それまで使用できなかった鮮やかな日本古来の伝統色や、大きな家紋等の文様も合法的に使用できることとなった。
京町家において、暖簾は単なる装飾品としての機能だけではなく、家の歴史や伝統といった精神的な側面や、場と場を区切るための結界としての意味合いも兼ね備えている。そうした「のれん」の持つ大切な文化を再考しながら、魅力あるまちづくりをしていきたいと思うものである。
|