町家暮らしのゲストハウス
写真は、京都市上京区千本下立売西入にある京町家ゲストハウス「まくや」。先日、ご縁があって改装させていただいた、京町家を宿泊施設にした再生事例である。20代のクライアントは自ら海外渡航をした経験があるということもあり、その体験を生かしながら、海外の旅行客が気軽に宿泊できる、京都らしい「ゲストハウス」へのリノベーションを希望されていた。
私自身も、23歳の春、バックパックと呼ばれる大きなリュックサックを担ぎながら、建築ガイドとスケッチブックを片手にヨーロッパの建築を見て歩いた。イギリスから、スペイン・イタリア・スイス・ドイツ・フランスへと40日間の一人旅であった。いろいろな異国の地で過ごしたゲストハウスでの楽しい思い出は、今でもよく覚えている。毎晩、世界各国からやってきた若者と、互いに慣れない英語で、旅の情報交換をおこなった。一人寂しくホテルに泊まるよりも、同じ仲間と酒を飲みながら楽しく過ごすことのできるゲストハウスは、23歳の私にとって、居心地の良い旅の宿であった。
新しく生まれ変わった「まくや」には、五つの和室を改装した客室の他に、掘り炬燵(ごたつ)のある座敷と、大きな墨塗りカウンターのあるサロンを計画した。縁側と庭を挟んだ向こう側にはトイレとシャワールームを整備し、町家暮らしを肌で感じることのできるゲストハウスとしての整備を心掛けた。
旅先で、異国の文化に親しみながら、楽しく仲間と一緒に過ごす。京都を訪れる旅人にとって京町家で過ごした貴重な体験は、いい思い出の1ページとなることであろう。
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