毎日新聞 2010年9月17日号


きょうと空間創生術きょうと空間創生術
 

景観政策の進化のかたちきょうと空間創生術

 山紫水明と称(たた)えられる豊かな自然と、1200年の悠久の歴史に育(はぐく)まれてきた、歴史都市・京都。そんな京都にふさわしい景観の保全と創造を目指して、取り組まれている京都市の「新景観政策」。日々、失われつつある京都の美しい景観を取り戻すために、平成19(07)年9月より施行された。あれから3年。

 「京都らしさ」とは、一体どういったものであるのかという、大きな命題を抱えつつ、私たちと京都市は共に、さまざまな考えをぶつけ合ってきた。そんな「新景観政策」が現在、ひとつの転機を迎えようとしている。

 「景観政策の進化の素案」と題された京都市の資料によると、3年間の「新景観政策」の運用・取り組みにおける問題点を総括し、条例改正を含めた景観政策の改善が検討されている。たとえば、「きょうと空間創生術85〜船岡山から山科は見えるのか〜」でも問題提起をおこなった、北区・船岡山からの眺めに対する山科区の建物におけるデザイン規制についても、今回の改正案では指定区域の解除がようやく提案されている。

 また、優良な建築デザインを誘導するために設置されていた「デザイン基準」の特例制度。この制度の活用には障害も多く、結局、民間建築物においては、1件(研究施設)の認定しかなされていない。これでは、「市民と共に創造する京都の美しい景観」という、当初の理念も十分に実現されているとは言い難い。 50年後、100年後の京都の将来を見据えた、望ましい都市の"かたち"を考えながら、京都で育まれた、美しい遺伝子を守り育て、未来へと引き継ぐ使命が我々にはあると思うのである。

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