毎日新聞 2009年12月18日号


きょうと空間創生術きょうと空間創生術
 

西花見小路の石畳きょうと空間創生術

 近年、外国人観光客や若いカップルの姿でもにぎわいを見せる、石畳の情景が美しい四条通以南の花見小路通。三条通から安井北門通までの約1キロの京都を代表するこの通りは、都をどりで有名な花街「祇園甲部」のメーンストリートとして、今日まで市民と観光客に親しまれてきた。

 現在の美しい石畳が敷設されたのは、02年1月のことである。電線の地中化と共に、京都市の道路景観整備工事として、四条通から祇園甲部歌舞練場前までの約260メートルが総工費6億円により整備された。かつてのアスファルトにくもの巣のように電線が張り巡らされた風景は一新され、京都らしい風景がこの花見小路に取り戻されることになったのである。

 そんな花見小路通の一筋西側に、西花見小路通という幅2.7メートルの閑静な京情緒あふれるもう一つの石畳がある。花見小路通のにぎわいとは対照的に、凛(りん)とした緊張感のあるこの通りは、互い違いに敷き詰められた御影石の美しさを肌で感じることのできる小路空間である。小路沿いにはお茶屋建築が建ち並び、繊細な格子の細工と簾(す)の調和がほどよく心地よい京都でも数少ない街路空間である。

 写真は、先日改修を行った「弓月 祇園店」(右側手前)。個性の美を探求する和装小物のイメージに呼応するように洗練されたラグジュアリー感を控えめに創出する。趣のある小路にとって歴史を継承していく再生事例の在り方とは。古い町並みが次々と消えていくこの時代にあって、アンチテーゼ(対照的概念)という視点も重要だと思うのである。

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