毎日新聞 2009年09月11日号


きょうと空間創生術きょうと空間創生術
 

文化住宅はロマンの香りきょうと空間創生術

敗戦から再興し、めざましい成長を続けていた昭和30年代。人々は日々、努力を続け、ここ京都においても、いわゆる「文化住宅」の建設が進んでいった。木造2階建ての長屋型アパートの中で、内風呂はなくても、素晴らしい未来を信じ、豊かな生活を営んでいたのであろう。

先日、そんな「文化住宅」を体験する機会に恵まれた。写真は中京区壬生川通四条下ルにある「CAFE SANNAMIJI.」の2階客席。瓦葺きの屋根とモルタル塗りの外壁をもつ典型的な「文化住宅」をモダンにリノベーションしたカフェである。2階部分の低い天井を取り払うと、そこにあるのは京町家を彷彿させるような、”ごろんぼ”(丸太梁)があらわれる。屋根下地に使用されている杉板では、断熱性能が良くないために断熱補強工事を施した。

木のぬくもりと、自然光を感じる安らぎの室内には、ベロアをまとったレトロでモダンなチェアーがおかれている。オーナーが自ら、「阪急電車の座席」をイメージしてコーディネートされた懐かしさを感じる座り心地のいい椅子である。レトロ感あふれる小物や雑貨が彩りを添える店内インテリアは、昭和の雰囲気を肌で感じる「くつろぎロマン」ともいうべき癒しの空間。

今後ますます増えていくであろう、文化住宅の再生において、ひとつの答えとなる事例と考えるとともに、戦前の京町家とも共通する「空間のぬくもり」を戦後の文化住宅にも感じたプロジェクトであった。

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