深い軒庇と現代建築
写真は中京区三条富小路をあがったところにある「俄ビル(NIWAKA Building)」。 2009年4月10日に完成した、地上4階・地下1階の商業施設である。設計は、安藤忠雄建築研究所。京都市内では北山・陶板名画の庭以来、15年ぶりとなる同研究所の設計プロジェクトとなる。1階にはギフトストアの「京都デザインハウス」・ 2階にはジュエリーブランドの「俄 京都本店」があり、京都モダンの美意識を世界に発信する建築として計画されている。
コンクリート打ち放し仕上げのモダンな外壁と、深い軒庇が印象的な切妻平入のこの建物は、京都市の新景観条例においては、旧市街地型美観地区に位置する。おおむね昭和初期には市街地が形成されていた旧市街地部分。市条例には、生活の中から生み出された特徴のある形態意匠を有する建築物が存し、趣のある町並みの景観を形成している地区であるとして約1143haが指定されている。その外観デザインに関しては、 周囲の町並みとの調和に対して特に配慮が求められている。
大きな軒庇には、瓦屋根のようなアルミキャスト材が使用されており、現代的な建築材料を用いながらも、歴史的な街並みに調和するような建築を目指したという。西日が射し込む大きな外壁部分に設けられたこの深い軒庇は、繊細なスケールの格子と相 まって、日除けとしての役目もあり、宝飾店という特殊な店内ディスプレイにも寄与する装置としてうまく機能している。先人の知恵を未来につなげる。良好な都市環境の形成・保全と、景観を将来の世代に継承するという市景観条例の目的(第一条)に も十分適(かな)った現代建築ではないだろうか。
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