和傘に感じる美しさ
平安時代前後に、仏教やお茶・漢字等と同じく中国より伝来したといわれている和傘。当時の和傘は開いたままで閉じることができず、閉じることができるようになったのは、安土桃山時代であるといわれている。広く庶民に使われだしたのは江戸中期以降のことであり、それまでは、菅笠(すげがさ)と簑(みの)が使用されていた。
その後、京都において和傘は、京ならではの厳しい審美眼のもと、独自の発展をとげることとなる。過度な装飾を排除したシンプルさとともに最高級の素材と職人技術で仕上げられた上品さを併せ持つ「京和傘」として京都独自の美意識を形成するに至る。最盛期には全国で年間1千万本以上生産されていたという和傘も、明治時代に洋傘が輸入され、西洋化が進むにつれ急速に衰退し、現在全国では十数件。京都で和傘を製作しているのは1件のみとなっている。
京都市上京区堀川寺之内東入にある、京和傘「日吉屋」。弊社からも、徒歩2分の位置にある。「伝統は革新の連続である」を合言葉に、伝統的和傘の継承のみならず、千年の歴史を持つ和傘の技術、構造を活かした新商品を開発し続けている5代目西堀耕太郎氏。
写真は、そんな和傘の伝統技術を生かした、和風照明「古都里−KOTORI」。2007年度グッドデザイン賞中小企業庁長官特別賞も受賞した心温まるランプシェード。軸受けから放射状にのびる竹骨と手漉き和紙の作り出す灯りと影は懐かしくもあり、新しい。ルーツを大切にしながら、現代に伝統の技を織り込み、変化を重ねる。柔軟な発想に触れるとともに、私たちの空間創生術にも通じる、「和」の潜在力と遭遇した瞬 間でもあった。
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