古い建具をリサイクル
秀吉による京都改造によって京都寺町と同時期に形成された寺院町「寺之内」。そんな、寺之内の一角にある、路地奥の空き家。先日、そんな一軒家を改装する機会に恵まれた。空き家となって、しばらく放置されていたために、雨漏りもひどく、お化け屋敷のような家屋の再利用を望んでおられたクライアントからの最初の言葉は、「なんとかなるでしょうか?」との不安げな質問からであった。
念入りに解体調査を行いながら、腐朽している部分を取り替え、適宜、補強修繕を施していく。半ば、古い町家を治療するといった感覚に近い状態で、再生計画を進行させた。
今回、建具の選定にあたっては、他の町家で使用されていた古い建具を積極的に転
用。玄関戸やふすま・障子といった建具の他にも、下駄箱や食器棚といった部分にまで古建具を再利用し、その数は合計14カ所にもおよんだ。
実は、京町家に使用されている、たたみや建具といったさまざまな部品は、他の町家にもぴったりとはまる様に、ある一定の規格で製作されている。たとえば、一般的に京間と呼ばれる、畳の大きさは3尺1寸5分(955mm)×6尺3寸(1909mm)で統一されており、その畳がどこでもはまるように、京町家は設計されている。現在のダブルグリッドと呼ばれる設計手法にあたり、古い部材を簡単にリサイクルできるよう先人たちが考え出した叡智なのである。
古い建具を手に触れてみると、使い込まれたなんともいえない味わいの良さがある。
古い梁との調和も美しく、粗大ゴミになりかけていた古建具も再び輝きを取り戻した。環境問題が取りざたされている現代社会。先人たちのリサイクル技術をもう一度見直してみてはいかがだろうか。
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