毎日新聞 2009年02月06日号


きょうと空間創生術きょうと空間創生術
 

国際様式と新・景観様式きょうと空間創生術

 上京区大宮今出川にある京都市考古資料館。旧西陣織物会館であったこの建物は、今から94年前の1915年(大正4年)に建造された。設計は、日本インターナショナル建築会の中心メンバーでもあり、京都高等工芸学校(現京都工芸繊維大学)の教授でもあった、本野精吾。本野自身の、処女作でもあり、代表作でもあるこの建物は煉瓦造りの地上3階建て。後年の構造補強工事により、内部は改変されているものの、外観は当時のデザインをそのまま現在に残している。

外観は、インターナショナルスタイル(国際様式)の先駆者でもあった本野精吾らしい、装飾の少ないモダニズムを強く意識した、当時としては極めて斬新なデザインである。寄棟屋根に玄関ポーチをつけ,壁面を単純化。外壁には白色の磁器質タイル張りを使用し、長方形の窓を規則的に配列。上層部のみに十字型のサッシ割をデザインし、全体のプロポーションにリズムを与えている。

一方、当時、国際様式と並び、対立的に京都で流行の兆しを見せていたのが、京都市美術館に代表される、国粋主義ともいえる帝冠様式。日本風(帝国)の様式を西洋の洋館にかぶせるようなスタイルは、「京都空間創生術48」でもご紹介したところである。ファシズム時代の流れとともに、帝冠様式がその勢力を伸ばしていくのであるが、戦後、再びモダニスム建築の流れとなる。その後、ポストモダン・レイトモダンへとその流れは受け継がれていく。

そして、時は今、新・景観様式。本野精吾に恥じない、後世に誇れる建築様式の構築が、今の私たちに課せられた重要な使命なのである。

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