毎日新聞 2009年01月23日号


きょうと空間創生術きょうと空間創生術
 

上野伊三郎と旧柳本邸きょうと空間創生術

 現在、京都国立近代美術館では「上野伊三郎+リチ コレクション展〜ウィーンから京都へ、建築から工芸へ〜」が開催されている。1892年(明治25)年生まれの上野伊三郎は、早稲田大学建築学科を卒業後、渡欧し、ウイーン分離派の中心メンバーである建築家、ヨーゼフ・ホフマンに師事し、1925年(大正14)年日本に帰国した。帰国後、上野伊三郎は、関西を拠点とした「日本インターナショナル建築会」を設立し、ブルーノ・タウトや、グロピウス、リートフェルトといった、著名な海外建築家もその会員であった。1920年代といえば、東京でも分離派建築会や創宇社が設立され、日本中で従来の建築様式を排除した、いわゆるインターナショナルスタイル(国際様
式)が萌芽(ほうが)し始めた時代であった。

一言でいうと、個人や地域などの特殊性をこえた、モダンで飾り気のない世界共通デザインである。

写真は、京都市上京区にある「旧柳本邸」(1929年(昭和4年)竣工)。一部、窓がアルミサッシに改修されてはいるものの、水平線を強調した、そのプロポーションは美しく、現代的な印象を受ける。80年経った今もなお、古さを感じさせないところが、インターナショナルスタイルの魅力であるともいえる。

先日、クライアントと話をしていた。聞けば、「旧柳本邸」にお住まいであるという。数年前に「旧柳本邸」の隣地で、設計をさせていただいたことが、きっかけとなり、いろいろと「上野伊三郎」の話を聞かせていただいた。

時を越えて、現存するモダニズム建築。「上野伊三郎」が思い描いたモダニズムの理想は今もなお、語り継がれている。

Publishedへ