番組小学校は町のシンボル
京都市下京区御幸町高辻にある「京都市学校歴史博物館」。平成4年(1992)に統合により閉鎖された旧京都市立開智小学校の建物を利用した館内には、日本で最初の学区制小学校である番組小学校の歴史をはじめとした、様々な京都の教育の歴史が、展示されている。番組小学校とは、明治2年の京都府による、新しい町組再編により形成された、地域における総合庁舎のようなものであり、当時は教育機関の他にも、町会所や保健所・消防・警察といった府の出先機関の機能も併設されていたのである。
旧開智小学校もそんな番組小学校のひとつとして明治2年(1869)に「下京第十一番組小学校」として、開設されたのがその始まりであり、以来、平成4年(1992)の閉校まで、123年間、町衆に愛され続けてその歴史を残してきたのである。
写真は、旧開智小学校の正門。明治34年(1901)年に創建された本瓦葺き切妻造りの荘厳で美しい門は今もなお使用されている。いわゆる後部に控え柱を立てた高麗門と呼ばれる形式からは当時の学校建築の様式を知ることができる。左右にはしっかりと袖塀が付けられ、潜戸も付けられている。隣に見える石塀は、大正7年(1918)、開智小学校の敷地拡張時に建造されたといわれている。コーナー部分の円形が印象的なこの石塀は、京都白川石を使用した重厚な間知石(けんちいし)布積み。上部には笠石が敷設され、さらに芝生が植えられており、町並みに対する配慮を感じさせる。門の奥に見えるのは、旧成徳小学校(現成徳中学校・高辻室町西入)の玄関車寄せを再移築したもの。丸みを帯びた瓦葺きのアーチ屋根は、明治初期に流行した擬洋風のスタイル。柱のデザインも先が細いローマ風円柱である。新しい洋風建築を学校に取り入れ、教育で人を育てようとした当時の町衆の思いが今でも伝わってくるのである。
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