毎日新聞 2008年11月28日号


きょうと空間創生術きょうと空間創生術
 

海を渡った京町家京都クラフトマート

 京都市と姉妹都市提携を結んでいる、ボストン市。アメリカ合衆国の北東部に位 置する、人口59万人のこの都市は、マサチューセッツ州の州都でもあり、ボストン大学のほか、ハーバード大学・マサチューセッツ工科大学を擁し,文化・学術面でも世界に広く知られている。そんなボストン市と、京都市が姉妹都市提携を調印したのは、1959年(昭和34年)のこと。ちょうど、来年には50周年を迎えることとなる。

1913年につくられたボストン子供博物館 (Boston Children's Museum)は、ニューヨークのブルックリン子供博物館に次いでアメリカでは2番目に古く、主に体験型の学習に主眼を置き、手で触れる・やってみる・参加することを通じて子供達に教室外での学びを提供する展示学習施設となっている。19世紀のレンガ・木造の倉庫を改修して建造された広い館内の一角には、姉妹都市である京都の文化を体験する展示エリアもあり、その中に、一件の京町家が丸ごと移築さ れ、展示されている。

1979年(昭和54年)、姉妹都市調印20周年を記念して、京都・西陣にあった2階建ての絹織物業者の京町家を解体し、ボストンに移築したものである。当時の玄関や通り庭の他に坪庭や露地の様子も忠実に再現され、当時の暮らしの文化を肌で感じることのできる展示施設となっている。台所やトイレを見ると、まるで30 年前にタイムスリップしたかのような印象さえ受ける。館内では、一番人気のある展示施設でもあり、子供達は”たたみ暮らし”のライフスタイルを珍しそうに体験してるのである。

先日訪れた、異国の地にある京町家。海を渡った京町家は、また違った角度から我々に新しいものの考え方を与えてくれた。

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