毎日新聞 2008年11月14日号


きょうと空間創生術きょうと空間創生術
 

京都の町家 ニューヨークへいく京都クラフトマート

 先日、京都市景観まちづくりセンターとニューヨークに拠点を置く日米交流団体「ジャパン・ソサエティ」の共催により開催された、シンポジウムへ参加する機会に恵まれた。京町家の魅力をニューヨークから幅広く海外へ伝え、保存・再生の手法により、伝統を継承する重要性を世界に呼び掛けようというものであっ た。

1200年の歴史都市「KYOTO」において、脈々と受け継がれてきた町衆の知恵をどう繋いでいくか。かつての戦災を免れたにも関わらず、戦後、急速な都市再開発が進められた、古都「京都」において、世界的視点から、京都の伝統を捉え直したときに、私たちはその文化的価値を改めて知ることとなる。1964年に建設された京都タワーも、当時近代化を目指していた「KYOTO」の象徴として、幾度も話題となった。

京町家の保存・再生は、単なる歴史的建造物保全とは一線を画する。その背景にあるのは、伝統に育まれた、町の遺伝子であり、人々のライフスタイルそのものがあるからなのである。近代化・合理化の名の下に戦後寸断されていた、いわば知恵の流れとも言うべき京都の美意識を町に取り戻さなければならないと思うのである。とはいうものの、単なる復古主義に回帰してしまっては、昔に戻るだけである。現代社会において、あるべき姿を真剣に議論し、伝統を創造する形で次 世代にバトンを継承する必要があるのである。

「SAVE THE MACHIYA」を合い言葉に、全世界から注目を集めつつある、京町家の保存・再生。会議の席上であった、「京都が守れなければ、世界がMACHIYAを守ります。」の言葉が印象に残る。”かたち”の向こうの”こころ”を残す。今、京都は、そんな新しい空間創生への覚醒をはじめているのかもしれない。

Publishedへ