毎日新聞 2008年05月23日号


きょうと空間創生術きょうと空間創生術
 

感性を発信する

 京都には、悠久の歴史の中で育まれてきた、さまざまな文化がある。それは、そ れぞれの時代において、人々が叡智と情熱を集積し、技術・デザインを始めとする様々な分野で革新的な挑戦をおこなった結果、今日の風土や様々な工芸が育まれてきた。

感性を発信する そんな京都の豊かな生活文化と情報を、現代に発信する基地として、先日「WAZA GU INTERNATIONAL」が三条高倉にOPENした。生糸会社のオフィスビルとして使用されていた、築35年の鉄筋コンクリート造5階建の建物は、感性と創造の拠点として、生きた情報の出会いと交流の場として生まれ変わった。殺伐としたオ フィスビルの外観は、格子を基調とした現代的なデザインで再構成され、内部空間も京の伝統美を今に伝える落ち着いた店舗空間として再生された。また、ビルの外観に彩りを添える独特のロゴマークはミッキーマウスのシルエットを逆さにしたようなデザインから、学生達の間で「逆さミッキー」と呼ばれ、親しまれている。

 歴史を重ねてきた”京もの”には、現代の大量生産品にはない本物の美しさがある。そこには「創り手」である生産者の思いがあり、また「使い手」である消費者にも本物の良さを伝える魅力がある。いわば、「感性」ともいうべき価値観 がそこには存在する。

 そうした「感性」の本質的な美しさを、現代の生活文化にあわせて再構築をすることが今の時代においても必要とされているのである。美しくかつ使いやすい。

 用の美ともいえる実用的なデザインが求められるのは、建築の世界においても同様であり、見て美しく、使って美しい。ものがあふれる現代社会において、今一 度、「感性」の「価値」を認識する必要があると思うのである。

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